今回はいろいろなテーマでQ&A風に簡略に説明を加えました。

(1)ピアススタジオ等々について。

基本的にピアスの穴開けなど医学部で学ぶはずもなく、ピアスの穴開けに関しては、世界中の医師が、ほぼずぶの素人です。

病院が安心などと喜んで皮膚科に行く国民は日本くらいのものです。確かに衛生面に関しては病院・クリニックですから安心ではあります。しかし、ピアスの知識はほとんど無く、肝心の穴あけのセンス・知識・経験が皆無の医師には、せいぜい耳たぶにピアッサーで穴あけするのが関の山で、ニードルで開けるべき軟骨ピアスとなるとまず期待できないということになります。ルック、ダイス、トラガス等を、ヘリックスと同様にたやすくスピーディーに上手に穴あけできる医師となると、日本全体でも私含めて数名しかいないでしょう。ホームページにも書いていますが、開ける位置のアドバイスすらできないクリニックでは、耳たぶすら結果については何をか言わんやです。かといって医師が不在のピアススタジオや宝飾店も、衛生面に不安があります。本人の同意・承諾があるとはいえ、医師以外が穴開けすることにも問題が無い訳ではありません。

いまだに多くの職場でピアスはダメなどといっているピアス後進国の日本の場合は、ショップ提携のピアス持ち込みクリニックやらピアススタジオには、衛生面以外にも様々な問題のあるところが多いのが現状です。お客様から高いお金をいただきながら、まともに開けられない施術者しかいないクリニックやピアススタジオは、できる限り避けたいところです。自己責任といえばそれまでですが、誇大広告などに引っかからず、よく調べてから行かないと後悔する羽目になります。

(2)金属アレルギーについて

ヨーロッパ諸国では、およそ2~3歳の間にほぼ全員の女児が両方の耳たぶにピアス穴開けします。これは、ヨーロッパ全域の風習です。ですから、たとえ自分が金属アレルギーの母親でも、ピアスの穴あけと金属アレルギーは無関係ですから、娘のピアス穴開け時に金属アレルギーのことなどは誰も気にも留めていません。

金属アレルギーはニッケルアレルギー(ニッケルかぶれ)とほぼ同義で、汗をかいて溶出したピアス金属中に含まれるニッケルに、生来的にかぶれやすい人に起こります。貴金属の装飾品で「かぶれ」等の問題を起こした経験のある方のほとんどは14金以下のゴールド系の装飾品で起きています。我々医師が、金属アレルギーのことを「安物かぶれ」と呼称するのもそのためです。(高級な貴金属の装飾品はほとんど18金以上ですし、さらに表面もPVDまたは同等の水準でニッケルが溶出しないように安全にコーティングされています。)

もっとも、金属アレルギーのある方(貴金属でかぶれた経験のある方)は、ピアスやネックレス等をお買い物するときに金属素材の成分に気をつければよいだけで、先にも述べたようにピアスの穴開け自体とは無関係です。当院に限らず、仮にも医療機関である病院・クリニックが患者様に用意しているピアスであれば、必ずアレルギー対応の素材のものです。ファーストピアスは原則として2ヶ月前後着けたままにしなければなりませんのでかぶれない素材、シルバー系ならばサージカルステンレス(またはチタン)、ゴールド系ならばサージカルステンレス素材の上に24金コーテイングするかPVDコーテイングされたものを必ず使用します。ですので、長期間着けっぱなしにしても「かぶれ」の問題は起きないので安心です。

ちなみに、普段ネックレスなどの貴金属を着けていて、汗をかいてニッケルかぶれを起こしたら、いつまでも着けていないで外出先であろうとさっさと粗悪品を外す。かぶれ症状がひどいならばリンデロンなどの市販軟膏を塗れば良いだけの話です。

(3)ピアスの穴開けに最適な季節はあるか?

先に答えを言うと、そんなものはありません。春夏秋冬、いつ穴開けしてもホールの完成にまったく変わりはありません。穴あけは夏場は避けた方が良いなどという馬鹿馬鹿しい噂を誰が流したのかはわかりませんが、夏場が問題ならば、ヨーロッパよりも早く生後数ヶ月の時期に耳たぶに穴開けしている東南アジアのピアス先進国のお子様たちはどうなるんだという話です。「常夏」の形容通り、東南アジア諸国は一年中まさに夏です。そもそも、たかがピアスの穴開けごときで夏場がリスクが高いというならば、夏に重篤な疾患で大変な外科手術を控えている人たちはどうなるんだという話です。